君の知らない空


彼はソファの裏側に身を屈めた。体を起こした時には、手に私のバッグと携帯電話を持っている。


「これ、返しておくよ」


手渡された携帯電話を開いたら、桂一と優美からの着信、さらに優美と江藤と美香からのメールが届いてる。


私の外泊と休暇が、そんなにも波紋を呼んでいるのか? と不思議に思いながら優美からのメールを開いた。


『昨夜、課長が亡くなったらしいよ。みんなびっくりしてる。詳細がわかったらメールするね』


読み終えて、息を呑んだ。昨日まで何も悪いところなど見られなかったし、元気そうだった。いったい課長に何があったんだろう。


続いて、江藤と美香からのメールを開いた。二人とも優美と同じく課長のことが書いてある。おそらく優美からの電話は、このことを直接話したかったからだろう。


「どうしたの? すぐにかけ直す?」


彼の声にはっとした。
昨日の彼と出会った事故の記憶が蘇る。課長も事故に遭ったのかもしれない。


でも、彼の場合は偶然の事故ではない。昨日、課長は美香のことをオバチャンや私に暴露した。もしかすると課長は?


「職場の課長が亡くなったらしいんです。昨日、事故に遭ったのはあなたですよね? もしかしたら課長も事故に関係あるのかと思って」


見上げた彼は顔色ひとつ変えないで、私の傍に立っている。いつの間にか、電話を終えた周さんが振り向いてる。


「あの事故は、僕を追ってきた車が起こした。君の課長は事故に遭ったんじゃない」


彼が淡々とした口調で答えた。あの事故で怪我を負ったというのに、まるで他人事のように。

それに、どうして課長のことを知ってるの?


< 279 / 390 >

この作品をシェア

pagetop