君の知らない空
   

話してるうちに、少しずつだけど彼に近づいていると実感できる。


もう少しで触れられるかもしれないと僅かな期待を抱く私を見つめて、彼が口を開いた。


「彼女のお父さんは、お兄さんのことを狙ってなんかいない。逆にお兄さんの身を案じている。自分を狙っている者が、お兄さんにまで危害を加えるのではないかと」


だから美香は、お兄さんを守るように彼に依頼したの?
だったら、お兄さんがお父さんを狙うのはどうして?
いつまでも疑問は消えない。


「お兄さんがお父さんを狙っているのはなぜ? お父さんに狙われていると誤解しているから?  それなら、美香がお兄さんに話したら、わかってもらえるんじゃないの?」

「お兄さんは本気でお父さんを狙っている。彼女を取り戻すために。きっと、伝えたくても聞いてはもらえない。だから内緒にしているんだよ」


たとえ聞いてくれないとわかっていても、話さないと伝わらない。お兄さんが本気なら、なおさら早く真実を伝えなければいけない。


そうしないと、危険な目に遭うのはお父さんやお兄さんだけじゃなくなってしまう。


だって、お兄さんは彼に狙われていると思い込んでる。自分を狙う彼を探している。


「でも、話さないとわかってもらえない……それに小川さんたちが、お兄さんを守ろうとしてるのに傷つけられるなんて、おかしいよ」

「大丈夫だよ、僕はそんなにドジじゃないから」


にこりと見せた笑顔は爽やかで、危険なんて微塵も感じさせない。私に気を遣ってくれているの?


「うそ、怪我してるよ……自転車だって壊れたし、何かあってからじゃ遅いんだから……お願い、やめてください」


もっと、自分のことを心配してよ。



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