君の知らない空
「高山さんの彼氏ですか?」
ずばり聞かれた私は、ちらりと彼を見上げる。彼氏だと言ってしまいたいけど、迷惑ではないのかと思って。
すると、沢村さんが声を上げた。
「あ、もしかして? 小川さん? うそ、そうだったんですか?」
高くなった声のトーンと見開かれた目が、さっきよりもさらに驚いたことがわかる。
「こんにちは、お久しぶりです。バレちゃいましたね」
帽子のつばを少し上げて、彼が笑顔を見せた。認めてくれた恥ずかしさに、胸の奥がくすぐったい。
「すごい……小川さんにも会えるなんて、びっくりしました。最近ジムに来られませんけど、お忙しいんですか?」
沢村さんはにこやかなな営業スマイルだけど、よほど驚いたのか少し顔が強張ってる。私と彼が一緒にいることが、よほど不思議なのか。
「はい、今は忙しいので落ち着いたら行きます。その時はよろしくお願いします」
沢村さんに対抗するように、彼もにこやかに返すから面白い。
「あ、呼び止めてしまってすみません、また二人で来てくださいね、お待ちしてますから」
沢村さんはぺこっと頭を下げて、意外にもあっさりと去っていく。もっと追求されると思ってたから、少し拍子抜けだった。
私が彼を気にしてたことを知っていたし、住所を教えてくれたりと協力してくれたのは沢村さんだったのだから。
「びっくりした、沢村さん、ジムで見るのと雰囲気が変わるよね」
と見上げたら、沢村さんの背中を見送ってた彼がきゅっと手を握り締めた。優しく微笑んで、帽子のつばを押さえる。彼の照れ隠しなのかな……なんて思える。
「僕も驚いたよ、さて、行こうか」
「うん」
行くんじゃない、帰るんだ。
わかってるけど寂しい。