君の知らない空
「私たちがここに入ったのも彼女の歳ぐらいだったよね……」
しみじみ言うと、優美はぷっと吹き出した。
「何だかオバちゃんみたいな言い方」
優美は同じ歳だけど、私よりも化粧や服装の好みが若い。もちろん気持ちは、もっと若い。現に今日入社してきた彼女と同じ年頃だと、サバを読むことが多々ある。
「でもさ、もうすぐ26だよ? 焦りを感じるわ……」
と言ったら、
頭の中に浮かんだ桂一の笑顔。
消えろ! と念じて私は頭を振った。
「四捨五入したら30だもんね……
今のうちにやりたいことはやるべきだよ、後悔しないようにね」
言い聞かせるような優美の言葉。
それは私に向けられたものに違いない。
「ありがと」
私は頷いて、コーヒーを飲み干した。