君の知らない空


どうしたの?
と私が問いかけるより早く、
優美の顔に笑みが溢れた。


私の後ろに向けられた笑顔……
誰かがいる。


背後から冷たい空気が覆いかぶさってくるのを感じて、恐る恐る振り返った。


「古賀さん、邪魔してごめんね。
高山さん、ちょっといい?」


噂をすれば、オバチャン……
野口さんと山本さん、二人が私を見据えている。


慌てふためく心を抑え込んで、私は優美に負けない笑顔を素早く作った。


オバチャンが満足げに微笑むと、
優美は会釈してそそくさと席に戻っていく。


私は心の中で、優美に手を伸ばした。


私を置いていかないで……と。



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