君の知らない空


どれぐらい呆然としたまま、この場に立ち尽くしていたのだろう。


はぁ……と大きな溜め息を吐いて見上げた電光掲示板には、もちろん運行状況など表示されているはずもない。


『調整中』


という大きな文字が我が物顔で居座って、混雑する改札口を見下ろしている。まるで高みの見物みたいに。


ぐるり見回すと、携帯電話を手にした人たちが焦った様子で話している。


そうだ、私も職場に電話しなきゃ。


働き始めて5年、毎日利用している路線だから事故や故障でダイヤが乱れたことはある。だけど、動かなくなったのは初めてのこと。


こんな時どうしたらいいのか、私の思考は完全に停止してしまっていた。



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