神様さえも朽ちらせる忌わしき呪物
「二人とも重症だね、大丈夫?」
「マスター、まるで人事のように…」
女が唸るように呟き、男があからさまに溜息を吐いた。
「ところで、こちらは?」
まだいい足りないらしい男を余所に、女は呆けているミッシェルを見下ろした。
「さっき知り合ったんだ。ねぇ、名前は?」
名前も知らずに話していただなんてと男がまたくどくど言うのを無視して、ミッシェルは俯いた。
「み、ミッシェル・デルタ…です」
誰かに名前を名乗ることも、二人以上の人と話すことも初めてでミッシェルはどんな顔をしていいのかわからなかった。