キウイの朝オレンジの夜


「・・・へ?・・さ、3件ですか?」

 稲葉さんは口元を持ち上げてにやりと笑う。

「8件に訂正」

 は!?あたしは目を見開いた。

「8件!?今週だけでですか?」

 だってもう今週は終わるじゃないかよ!どうして倍以上に増えるのよ、いきなり!?

 稲葉さんはにやりとしたままの顔で、あっさり言い放った。

「そう、寸暇を惜しんで働いてくれ。うちの稼ぎ頭‘玉’に、男と飲みに行くプライベートな時間は必要ない」

 こいつ鬼かっ!!心の中で叫んで、いやいや、こいつは昔から鬼だった、と自分で突っ込んだ。

「・・・いやあ、あの・・・友達、失くします・・・そんな・・・」

 しどろもどろに言葉を返すあたしを見て、稲葉さんは嬉しそうに微笑んだ。

 中央の稲葉と呼ばれた、あの究極の甘え顔で、あたしを覗き込む。

 ぐぐっと運転席から身を乗り出した。

 ひょえええええ~(泣)・・・や、やめてえええ~・・・。そんなそんな可愛い顔で、やったら優しさを醸し出した顔で鬼のような発言するくせに、そんなそんな・・・覗き込むのやめてくれええええ~・・・。



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