キウイの朝オレンジの夜


 あたしは必死で言葉を搾り出す。すると稲葉さんは、まだ言うか、と小さく呟いた。

「・・・お前、結構強情だよな」

「研修時代の教官が良かったもので!どいてください~!!」

 くくくく、と口の中で小さく笑って、稲葉さんはやっと体を運転席に戻した。あたしは真っ赤になったまま、呼吸が整わずに勝手に酸欠状態だった。

「なっ・・・なんてことを~!」

「上司を露骨に避けた罰だ」

「じょ、じょ、上司がこんなことしていいんですか~!!」

「職権乱用は俺の専売特許だ。何をそんなに動揺してるんだ、お前今フリーじゃなかったっけ?」

 ・・・だから動揺するんだろうがよ!!あたしは何とか絶叫を堪える。

 荒く息をつくのが恥かしいので、ゆっくりと深呼吸した。ぐったりと助手席に沈み込む。

「・・・部下で遊ぶの止めて下さい。身が持ちません」

「なら俺に逆らうなよ。学習しろ、遊ばれたくなかったら」

「逆らったことなどないです!」

「従順に聞いたこともねえけどな」

「指示されたノルマは完達してます!」

「ノルマじゃない、あれは目標だ。とにかく―――――――」


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