キウイの朝オレンジの夜


 夜の間に一度運よく目覚めて、何とか布団に這っていったんだった。

 でも一度起きてしまったせいで、次はバンバン夢をみるはめになった。オール稲葉さん。大体キスシーン。体を持て余してごろごろと部屋の端から端まで転がって耐えた。そのせいで、あたしはがっつり寝不足だった。


 翌朝一番にこの部屋をノックしたのは、菜々だった。

「おはよう、玉。・・・昨日のことで、あたし謝りに・・・」

「謝罪、いらない。結果的にはあんたのお陰でひっさしぶりにキスに、それも極上のやつに恵まれたから」

 あたしは欠伸をしながら菜々に言う。は?と判りやすい反応をしたので、部屋に引っ張り込んで昨夜何が起こったか、をだらだらと喋った。

「まーじーでー!?」

 一度絶叫してからバタバタと歩き回ったけど、いきなりピタッと止まって今度は笑いだした。

「・・・大丈夫?」

 あたしは朝も早い時間に突然壊れた同期を心配する。

「大丈夫~!いや、大丈夫じゃない~!!嬉しすぎてあたし壊れたぁ!」

 ・・・うん、壊れてるのは見て判るけど。

 あたしは寝不足が酷くてまだぼーっとしていた。菜々は跳ねるように近寄ってきて、あたしを揺さぶる。

「良かったじゃん良かったじゃん!!やったー、玉にも恋人が!それも、しかも、あのあのあのあの稲葉支部長が~!!」

「・・・・もうちょい、静かな声でお願いします。付き合うのは秘密だし。それと揺するのやめて、昨日食べたもの全部出る」


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