キウイの朝オレンジの夜


「え!?あたしの研修欠席で怒られたんですか?」

 テーブルに身を乗り出して聞くあたしに、大丈夫、と手を振る。

「支社のスタッフじゃ話にならないと思って、どうせ行くなら上と話そうと思っただけ。そしたらご飯に連れて行かれたんだ」

 それで?それで??

 あたしはハラハラしながら続きを待つ。稲葉さんはグラスを置いて、にっこりと笑った。あたしと言い合いをして打ち負かした後と同じ、無敵!って笑顔だった。

「経費、ちゃんと貰ったよ」

「嘘っ!?」

 おおおお~!凄いぞそれは!あたしは驚いてお箸を落としかける。

 食べろよ、と前で促して、彼は話す。

「お客様第一って社訓にもうたってるのに、客の永眠を見届けたい営業が研修に参加出来ないからとペナルティーがつけられるのは間違ってませんか、って、そのまま言ったんだ」

 ―――――――・・・支社長に?あたしは若干呆れた。・・・すごい度胸だ。

「それで?」

「そしたら俺の話を詳しく聞き、支社のスタッフに今日の研修の趣旨を聞き、神野に関しては別の日に補講をしてくれることになった」

「・・・」

「だから、当支部の予算は安泰。良かった良かった」

 前でそう言って笑い、見たこともないラフな格好で稲葉さんはビールを煽る。


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