ヘタレ少年と恋模様
重い足取りで教室に戻る。
放課後のことも憂鬱だけど、教室に戻ることに対しても。
質問ぜめにされるか、遠巻きにされるか。
こんなんじゃ友達が出来るどころか、また中学の時と同じになりそうで怖い。
都合のいい存在。
それだけは嫌だ。
教室の前にたどり着くと、なるべく目立たないように扉を開ける。
それでも一瞬静まり返り、また教室はざわめきたつ。
ああ、遠巻きパターンか。
声を掛けようと思っていたやつもチラチラと怯えたような、哀れんだような視線を寄越す。
とりあえず、しばらくは大人しくした方がよさそうだ。
潔く自分の席に戻ろうとした。が、一人の男が俺の前に立ちふさがっていた。
なんだこの人。
「お前、かっけーな」
「……は?」
目の前の男から発せられた予想外の言葉に、しばらくポカンとする。何を言われるのかと思えば。
かっこいい?
俺が?
男を凝視する。
どちらかといえば爽やかな雰囲気でニカッとした笑顔を見せている。
「どこら辺が?」
そう訊けば、
「さっき、金髪の兄ちゃんに連れてかれただろ。お前、声は震えてたけど、態度は堂々としてた。なんか、かっけー。そう思ったんだよな」
はあ。
正直どこがかっこいいのか俺にはわからない。
声が震えてたのは、怖かったからだし、態度が堂々としていたのは、これから起こることについて怖がることを諦めていたからだ。
それにわざわざ本人に話すなんて、頭大丈夫なんだろうか。
誤解されるのも嫌だから、実は怖かったことを正直に話した。