ヘタレ少年と恋模様


正面にいる男は目を細める。


「いいも何も、俺から言ったんだろ。お前、ずっと女子に囲まれてたから近づきにくいのなんのって。
朝も来んの遅ぇし帰りは気づいたらいねーし。今が声掛けるチャンスだと思ったんだ」


ま、まじか!

俺、そんなに話し掛けにくかったのか……。

じゃあ、朝早く学校に行って帰りも遅くまで残ってたら。

こんな悩むこともなかったっつーことか!


「是非!是非友達になります!いや、ならせてくれ!」


そう言った瞬間、どこからともなく拍手が沸き上がる。


見渡せば、クラスメイトたちが立ち上がって拍手をしていた。


……なんでみんな拍手してんの?


さっき友になったばかりの男も、突然の拍手にポカンとしている。


「山村くんよかったね!」


「ぐすっ、あたしこういうドラマ好きなのー」


「うおお不覚にも感動したぜ」


「実は俺も友達になりたかったんだぞ山村」


口々に叫ぶクラスメート。

中にはハンカチで目頭を押さえている女子もいる。


え、この人達正気?
感動する場面なんてあった?



ってちょっと待て。つまりは。


ここまで全部聞かれていたのだと悟る。

うわ。恥ずかしい!

しかも教室の雰囲気が公開告白したみてーなノリじゃねぇか!


俺が何も言えずに固まっていると、初めての友(名前を知らないのでこう呼ぶ)が手を挙げた。


もしかしてこの場を静めてくれるのか?

「静粛に!えー俺と山村くんは晴れて友達となりました。これを祝して、もう一度盛大に拍手!」


っおい!
静めてくれねぇのかよ!

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