金色の師弟
離れた地の主人へと馳せていた思いは、熱の籠もった声にかき消された。
「今日こそは勝つぞ!」
毎回同じ台詞を吐かれるため、アデルは苦笑を漏らした。
台詞だけではなく、声の覇気もいつもと同じ。
しかし、覇気だけでは勝てない。
アデルは不敵に微笑むと、左手で弓を構え右手を背負った矢筒へと伸ばす。
まだ矢には触れず、構えるだけ。
「あいつが俺の勝利を信じてる限りは、負けられんさ」
「……ルイか」
ディンも楽しげに口角を吊り上げ、ぶら下げていた剣を抜く。
構える前に一瞬視線をルイに向けた。
すぐに視線をアデルに戻す。
そしていつでも動けるように腰を低くし、ディンも構えた。
距離を空けたまま、睨み合いが始まる。
剣には遠く、弓には近い。
微妙な距離感で唐突に始まった手合せに、外野の興奮が高まる。