金色の師弟
どちらが勝つかを予想する声も聞こえる。
騒めきの中、ディンはアデルにのみ聞こえる声で挑発をするように尋ねた。
「お前、やけにルイを気に入っているようだな。珍しいじゃないか、女相手にも風のような態度のお前が」
頬をかすめては去っていく。
その気になったときには、そこにはいない。
追い掛ければ手が届くけど、気を抜けば見失う。
アデルは、そういう男だ。
二人はそれなりに長い付き合いなのだ。
女性に囲まれるアデルの姿を、ディンはうんざりするほど目にしてきた。
アデルは安い挑発に乗るような人間ではない。
ディンもわかっていたが、何とか隙を付こうと考えているのだ。
一切の隙もなく構えを保つディンに向かって、アデルは目を伏せて微笑んだ。
「当たり前だ。あいつにだけは本気だからな」
「は?」
予想外の返答にディンは一瞬目を丸くする。
その一瞬を、アデルは逃さない。