金色の師弟

ディンが言葉を探しているうちに、二人の手合せは終了した。

「せっかくのお休みなのに、すいません……」

「教えてやると言ったのは俺だからな。気にすることはないさ」

アデルは軽く笑ってルイの頭へ手を伸ばす。

いつもの調子で撫でようとした手は、ルイにひょいとかわされた。

「……」

「あ、その、ありがとうございましたっ!」

ルイはぺこりと頭を下げると、そのまま背を向けて逃げるように走り去った。

行き場の無くなった手はそのままで、ルイの背中を見つめていたアデルの耳に、小さな笑い声が届く。

それはよく知る、自称好敵手の声。

「……ディン」

アデルはゆっくりと振り返り、口元を押さえぷるぷると震えている友人を睨み付けた。

ノルンがいたことは知っていたが、ディンには気付いていなかった。

「思い切り避けられてたな……!」

笑いを堪えて震えた声で言うディンに、苛立ちを感じアデルは適当な石を拾い投げ付けた。

石はディンの顔の真横を飛び、地面に落ちる。
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