金色の師弟

叶わぬ恋と知っていたから、時々会って会話をするだけで満足していた。
ノルンに婚約者がいたことは知っていたし、それが有名なアデルであることもわかっていた。
ノルンという婚約者がいながら数々の浮名を流すアデルに腹を立てていた時期もあったが、ノルンを通じて彼と直接話してみると、不思議と好感が持てた。
そして、自分の持つノルンへの恋心があっさり感付かれたことも、すぐにわかった。

諦めていた恋だった。
それが今、ノルンも同じ気持ちだったのだと知る。

「私もです。私も、貴方が……」

好きだ、という言葉を口にすることは憚られた。
だが、ノルンは十分にタクトの気持ちを察したようで、顔を真っ赤にしてタクトから目を逸らせなくなっていた。
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