金色の師弟

ぎり、とエルクが唇を噛む。

悔しさを感じるのは、エルクも少なからずそう思っている節があるからだ。

アデルは、弱々しく首を振った。
考えたくない可能性を、苦しげに言葉にする。

「おそらくオネスト王国には、新たな王が必要となるでしょう」

その言葉の意味を、理解できないエルクではない。

エルクは膝の上で拳を握り締めた。

アルノムの回復が見込めないのなら、ミーナは王となる男を迎え入れなければならない。

それが、例え好きでない相手だとしても。

「あいつはまだ十七歳なんだぞ!」

「しかし彼女は王女です」

「それ以前に、一人の娘だ!」

怒りを露わに、エルクは立ち上がった。

テーブルに拳を叩きつけた。
その衝撃でグラスが床へと落ちる。

儚くも粉々に砕けたグラスに見向きもせず、アデルは冷たくエルクを見上げた。

「いいえ、彼女は王族です」

繰り返された言葉。

睨み付けるエルクの視線に臆することなく、アデルは強く断言した。

エルクは忌々しげにアデルへと背を向ける。
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