環七あやめの遊戯
少女特有の潤んだ唇に、ぷるるんとふるえる寒天がつるり、つるりと吸い込まれていく様子をじっと見つめるあやめ。

それはあたかも、年頃の男子が、自分の部屋に引きこもり、官能的な雑誌をまじまじと見る様子に似ていた。

-ああ…いつ見ても本当に綺麗だな、可愛いな、法条さんの、あんみつをほおばる姿。

いつも学校でお弁当の後、学校近くのコンビニで買ってきたあんみつを、本当に美味しそうに食べてるよね。



そうだ、この子もきっと、俺の遊戯の一つになってくれるに違いない。

…ああっ、いつでもこのシーンを楽しめるなんて、素敵。-

あやめは、たっぷりと可南子の食事姿を覗き見した後、街へ出て、可南子似の女性を片っ端から物色し始めた。

-長い黒髪の、潤いを帯びた唇の女性、女性っと…-

しかしこの行動が、彼を失望のどん底にたたき落とす事になるとは、その時のあやめには、思いつきもしなかった。



-あれっ?何で!法条さんが頭の中によみがえってこない!何で!?-



どうやら、可南子に対する思い出だけは、なぜか刻み込む事が出来ないらしい事に、あやめは気付いた。
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