雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

 眉をひそめて一瞬絶句した後、ユイは立ち上がって叫んだ。


「そんなのジレットがかわいそう! ジレットは王子様が好きなのに!」


 ユイはまだ分かっていない。
 自分の行く末に何が待っているのか。

 ロイドはユイを見上げて、静かに問いかけた。


「他人の事より自分はどうなんだ? この先、もしかしたら一生、耐えられるのか?」


 ユイは少し目を見開いて、そのまま固まった。

 やはり考えていなかったようだ。
 それを分かった上で、ユイがどう答えるのか聞いてみたくなった。

 呆然と立ち尽くすユイを見つめて、ロイドは淡い笑みを浮かべ再び問う。


「オレと一緒に逃げるか?」
「え?」
「何もかも放り出して、何もかも失ったオレと一緒に」


 ユイは何も答えない。

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