元恋人の甘い痛み【完】
左手に掛けているブレスレット式の腕時計を見ると、時刻は23時になっていた。
かれこれ二時間もこの場に居るのね。もうそろそろ警備員が来ても良い頃なんだけど。
白いベンチから腰を上げてドア付近へと歩み廊下の様子を窺う。流石に人一人として居ない所かとても静か。
こんな時に限ってスマホを持って居ない自分が憎らしい。これからは何処へ行くにもポケットに入れていた方が良いわね。
「…こんな所で一夜を過ごすなんて御免よ」
硝子ドアから離れ様とした矢先、エレベーターが停まる時のチンと言う音が聞こえた。
もしかして、警備員が見回りに来た?