元恋人の甘い痛み【完】


エレベーターが到着し、恐らく社長室であろう部屋の手前にあるドアには秘書室と書かれてあり、その部屋の前で立ち止まる。


「此処がお前の部屋だ」

「分かった」

「お前も昔と違って随分あか抜けたみたいだな」

「どう言う意味?」


雷牙は軽く前屈みになりずいっと顔を近付けて来る。


手を伸ばし、首筋に貼っている絆創膏を人差し指で引っ掻きながら私を見つめ口端をつり上げる。


つまり、このキスマークに気付いてるって事ね?


当たり前じゃない。私はもう、あの時の私じゃないんだから。


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