元恋人の甘い痛み【完】

「濡れてるじゃねぇか。家に入るか?」

「いいえ、大丈夫。…話があって」

「話って何だ」

「……えっと」


“好き”


たったこの一言が中々言えない。


緊張しているからって事もあるけれど、それより何より拒絶されるのが怖い。


今の雷牙はきっと冷たくあしらうと思う。


それが凄く怖い。


「…誕生日…祝ってくれるって…もう、無効…?」

「…………」

「無効なら良いんだけど…どっちか知りたくて…」

「…お前は良いのか?俺なんかに祝われて」


雷牙は私の額へと手を伸ばし、へばりつく濡れた髪を掻き分けた。
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