As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「…コイツを傷つけるような真似…、絶対するんじゃねーぞ。」





誰ひとりと……


口を開く者はいない。



そのかわり、




「俺が見張っといてやるよ。」



「……能戸…。ん、たのんだ。」



カメラマンをしていた『能戸』くんが……




そう言ってくれた。




「……じゃあ……、行ってくる。」



「……うん。」




最大級の信頼を……



いつの間にか、ヤツに置いていた。



逆に……


中道もまた、私を信じてくれているのかもしれない。






結、あんたの所に…



今、行くから。






だから……

待っていて。



知らなくて……


ごめん。



一番近くにいるのに…


気づかなくて……、ごめん。








「……ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。」




今、私にできることは……



結の居場所を作ること。




それくらいしかないけれど、



中道に…負けてなんかられない。



中道が結を想う気持ちに……負けたくない。



「……当番の時間、延長して下さい。ちゃんと…、頑張るから……。」





『思い出になるかなって』



あいつがそう言ってくれたように……




結にも、この学園祭が良い思い出として刻まれるように……。





「……カメラマン、頼むよ。」




唯一一人だけ……、



能戸くんだけが、私の声に反応した。






「……ありがとう。」




私は深々と頭を下げる。




……が、他の生徒達は…、



「客ひき行こ。」




私と能戸くんを残して…


教室を後にした。






「………気にしなくていいから。」



「………。」



「…なんか…、ごめん。こっちのクラスのことに巻き込んで。」



「……え?」



「結の双子の片割れの方だろ?」



「……ええっ?」



能戸くんも…
気づいてた……?




「最初結本人かと思った。こうして見るとそっくりだし。」



「…よく違うってわかったね。」



「ああ…、それはさ、中道見てたらわかった。」



「………。」



「そもそも…あいつらを近づけたのは俺だし。」



「………?」




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