As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
一瞬……
気持ちが揺らいだ。
立ちあがり、少し左側でミットを構えるキャッチャーに対して……
俺はつい、ベースの真上を目掛けて…
投げようとする。
『ダメだ!』もう一人の俺がそれを制した。
手から離れていった球は……
ふわっと浮いて。
見事なすっぱ抜け!
強豪4番がそんなチャンスボールを逃すはずもなく、
スイングしたバッドが…小気味よい音を立てた。
鋭い打球は一直線にこっちへと向かって来て……。
あわててグローブを構えるも、
時、既に遅し……。
俺は…そのまま、
マウンドに倒れた。
朦朧とする意識の中で、俺を取り囲んでいたのは大人達で……。
その輪の外から、中道が複雑そうな表情を浮かべて……
俺を見ていた。