As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「………。」



「…なあ、答えろよ。さっきのアレが…、お前の本心?」



「………。」



『違う』とそう言ったら……。



何かが変わる?



ううん、そんなことない。


だって中道が好きなのは……




「……野球、行けなくてごめんね。陸上の大会に行ったんだ。」


「結から…聞いた。」



きっと私は…、中道の口から『結』の名前が出る度に、こうして胸が締め付けられるのだろう。



でも……


いつか、慣れるかな。



慣れる日が…


来るのかな。





中道はうす茶色のその瞳を、一切逸らすことはない。



私は知ってる。



この真っ直ぐな瞳は……



私の答えをただ待っている。



私のから出た言葉だけを…


きっと信じるんでしょう?




「…結と…、昨日会ってたでしょう?」



「…うん。」



「……良かったね。」



「………。」



「結が、まさか私の天敵を本気で好きになるなんて思わなかった。結は……誰よりもアンタのことが好きなんだ。」



「……。」



誰より…。


ううん、
私なんかより……。



「…お前も…、良かったな。」



「…え?」



「すげー噂になってるぞ、里中と。結と間違えられてはいるけどな。」



「…それは……。」



「…それに、さすがによそ様の玄関先で抱き合われちゃあ困るよな、こっちも。」



「………。」



…見られてた。



中道に……


見られてたんだ…。




「あいつは…、絶対人を裏切らない。好きな女にはいつも真剣に向き合う。真っ直ぐで…、いい奴だ。まさか…、お前を選ぶとは思わなかったけどな。色気はねーし、意地っ張りだし……。でも…、似てるんだ、お前ら。だからきっと…、合う。」





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