As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
ぶつかった視線が…、不意に逸らされる。




……最悪…。





「ゴメン…、ちょっとトイレ……。」



私はその場にとどまることが出来ず…


残りの煎餅を律に預けて、急いで教室を飛び出した。



「ゆうッ!」



律が私を呼ぶ声すらも無視して…。








逃げ込んだ先は、あの屋上で……



私は小刻みに震えるその手を、必死に抑えつけていた。




だって……


ああ言うしかなかった。



なのに……



アイツに聞かれてしまったことが、こんなにも苦しいなんて……。




本人の前で「友達宣言」をした私。



これで本当に……



もう、どうにもならない。




「…バカ………。」



息を切らしながら、嗚咽する。




何で泣くのよ。



今更…、何で涙なんか出るの?






「…何で逃げるんだよ。」



「………!」




背中から……声が聞こえた。




何で…?


何で追ってなんか来るの?



止まらないよ。


涙が…
止まらなくなる。




「逃げる必要ねーだろ。」



中道……。





「何で来るのよ。」



「……。お前が逃げるから。」



「……逃げたんじゃない。」



「…こっち向いて言え。」



「…嫌だ。」



「こっち向けって!」




強引に肩をおさえられ…



私の体はいとも簡単に、中道の方を向いてしまった。




「…何で泣くんだよ。」



「別に…。コンタクトがズレただけ。」



「…うそつけ、お前は裸眼だろ。」



「…違うもん。」



「……。アホか。だいたいあの状況でお前が泣く理由ねーだろ。」



「………。」



「訳わかんねー。俺にはお前の考えてることが全然わからん。」



「いいよ、わからなくて。」



「…野球見に行くのも平気ですっぽかすし、行けないならそう言えば良かったのに。」



「………。」



「俺が誘ったのは、お前だ。」





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