【完】プリンセス
同じ様にしゃがんで、手を差し出した。

俺の差し出した手を、両手を顔にあててた隙間からチラッと確認した。


「せめて……手だけでも繋いでくれますか?」


いい……。
もう、別にいい。


心菜と付き合って、楽しくラブラブカップルになれるなんて無理に決まってた。



心菜のペースでいいよ、もう。



俺のカレカノ理想図がおかしかったんだな。
男のくせに、そんな事を思った俺が馬鹿だった。


「陽呂のばかぁー」


って、はぁ?

なんで俺がバカなんだよっ!
いや……確かに今思ったよ?

でも、それを何でお前が言……


「恥ずかしかっただけだもん……」


え?
恥ずかしかった?


暗闇の中でしゃがんで止まる俺達は不思議な光景だろう。


「今まで……普通で急に彼氏とか……恥ずかしいもん」


これ……心菜か?

心菜だよなぁ?


「陽呂だって……敬語だったじゃん」


それは、余りにも心菜が今までと同じだったから。
俺も合わせなきゃって。


「陽呂のばかぁ……」


って、また泣いてんの?


心菜の声を聞くだけで、泣いてるのか泣いてないのか……わかってしまう。


馬鹿って……それは本心なの?

ねぇ?心菜。




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