【完】プリンセス
シャワーで、頭からお湯をかぶって流れそうになった涙を誤魔化した。



涙なんて出てないもん。

陽呂を信じてるもん。



奈津美さんの昔からの意地悪に決まってる。




こんな事で泣いたりなんてしない。
私らしくもない。


私は強いの!


最近の私は……おかしかっただけ。




何か素直になってみたり……泣いてみたり……

全部、陽呂が悪いんだもん。
陽呂が……。




いつもの私に戻らなくっちゃ。


そう、戻るのっ!


そしたらいつもみたいに毒舌で返せるんだから。








お風呂から出たら、自動販売機の前で休憩してる男組。


ここって……浴衣なんだよね。



キチンと着こなしてる壱。

一応着てる林君。

着くずしてる陽呂。



何か……フェロモンが出てる気がする。



「あーやっと来たー女子軍団」



長いから待ちくたびれた~って顔の3人は『女は風呂が長い』だの何だの愚痴を零してた。

大分待ったんだろう、買ってくれてたジュースの缶に少し水滴がついていた。




「心菜さん、温泉はどうでした?」

「別に? 同じなんだから感想は同じじゃない?」

「……どうかしました?」

「別に」




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