こうして僕らは、夢を見る
練習試合の話をしてから2日後。私は光陽高校に脚を運んでいる。マイフレンドの桜子と一緒に。



光陽高校の門を潜って数分。私の前をスタスタと足早に歩く桜子は何故かお怒り気味な様子。



12cm程の高いエナメル素材のヒールが苛立ちと同調するかのように甲高い音を鳴らす。



サングラスを掛け髪を束ねる桜子はどこぞの海外セレブみたい。キャミソールに豹柄のクラッシュ感なパギンスでこなれた雰囲気を醸し出している。





「ああ、もうっ、絶対に蕾の車には乗らないから!」





伝統ある光陽高校に桜子の悲痛な叫び声が響き渡る。



こうも桜子が苛立っている理由は私の運転の仕方にあるらしい。車は桜子の愛用者。二日酔いだからと言って私に運転を任したのに何て身勝手な子。





「仕方ないじゃん。ペーパーだもん。」





唇を尖らして反論した。免許証を取得から運転なんてした事ない。グラディエーター風のブーサンを履いている私は桜子の数歩をダラダラと歩く。



厚みのあるウエッジソールデザインで抜け感とボリューミーのコラボが好きで即購入したのを覚えている。



豹柄の桜子とは対照的に花柄のマキシワンピース。美脚魅せを叶えてくれるアシメ裾。余計な飾りを控えたシンプルなディテールだから甘過ぎず大人に着こなせる。





「だからって限度があるでしょ!あれは死ぬわ!」





ヒィ、恐ろしい!なんて態とらしく身震いさせる桜子。





「運転の仕方なんて曖昧だよ。運転出来た事さえ奇跡なんだから。事故らずココまで来れた事を感謝して欲しいくらいだもん。」

「ならそれを早く言いなさいよ!これなら自分で運転した方がマシだったわ!アンタの運転じゃ命が幾つ合っても足りない!」





人に運転を無理矢理押し付けた事を棚にあげ、そんな事を言う。



その言葉にカチンと来た私は数歩後ろから睨んでやった。





「で?」

「え?」

「『え?』じゃ無いわよ!」





突然振り返った桜子が私に聞く。あまりに突然すぎる問いに私は首を傾げた。





「ココからどう行くの?テニスコート」





練習試合は当たり前だけどテニスコートで行われる。と言うより、もう行われているだろう。


私たちは運転云々言い合いをしていたから来るのが遅くなった。
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