Secret Lover's Night 【連載版】
プリンやぬいぐるみやエプロンなど、そんな小さな物しか強請らなかった千彩の最大のおねだりに、晴人は思わず言葉を詰まらせた。じわりと涙が溢れて来るのがわかる。

頭も、心も、体も、「幸せだ!」と訴えている。


「あほやなぁ。彼女が俺の一番愛してる人なんやったら、千彩はもう俺の彼女やろ?お前は俺の中で一番やで」


しっかりと両頬を挟んで言い聞かせるように言うと、ぶわりと千彩の目から涙が溢れた。綺麗な涙だ…と、どこか遠くでそんなことを思いながら、そっと口付ける。

「寂しかったらいつでも電話しておいで?ちゃんと会いに行くから」
「…うん」
「恵介が作ってくれたエプロン持ってくか?お兄様の手伝いするやろ?」
「…うん」
「くまは?」
「持ってく…」
「よし。ほな荷物に入れとこな?」
「…うん」
「それから…」

言いかけた晴人の手を取り、千彩は「はると…」と小さく名を呼んだ。

「千彩…お前だけなんやで、そう呼んでもええ女は。お前は俺の彼女なんやからな」
「…うん」
「大丈夫や。心配せんでもちゃんと迎えに行く」
「…うん」
「俺はお前を捨てたりせん。約束や」

そっと頬から手を離し、改めて千彩の手を取る。そして、ギュッと小指を絡めた。


「二人で幸せ守ってこうな」


再び泣きはじめた千彩を抱き締め、晴人は思う。このまま、この瞬間が永遠に続けばいいのに…と。
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