Secret Lover's Night 【連載版】
駐車場に到着すると、そこには両手いっぱいに荷物を抱えた恵介が待ち構えていた。

「けーちゃん!」
「何や、おっさん。遅刻もせんと珍しい」

ニヤリと笑った晴人の言葉に、恵介は唇を尖らせた。

「メーシーから電話もろてすぐ来たんや。俺にも電話くれたら良かったのに」

やはり恵介も同じなのだろう。千彩と離れ難く、最後に手を振るその瞬間まで共に…と願っている。

「お前のことやからどうせ嗅ぎ付けて来ると思ったんや」
「メーシーが電話くれんかったらどうすんねん!」
「まぁ、その時はその時やろ」

ははは。と笑う晴人に更に不平を述べようとするも、そっと背中を押す千彩にそれを止められる。

「めーしー待ってるよ?」
「ちぃ、けーちゃん早くー言うたれ」
「けーちゃん早くー!」
「はいはーい!」

三人で笑い合いながら階段を上り、事務所の扉を開く。すると、二人の人影が見えた。

「メーシー?」
「めーしー!」
「あっ、おはよ。ほら、姫のご到着だよ」

チラリと顔を覗かせたのは、ノーメイクのマリ。久しぶりに見たな…と、半年ほど前のことが酷く懐かしく思えた。

「マリちゃん?どないしたん?」
「コイツがさー、どうしても姫に会いたいって言うもんだから連れて来たんだよ」
「What's!?アンタが来いって言ったんでしょ!」
「え?そうだっけ?」

恍けるメーシーの肩をバシンと叩き、マリはヒールの音を響かせる。それに驚いた千彩が、サッと晴人の後ろに身を隠した。

「ん?」
「はる…怖いおねーさん…」
「怖…っ!?」
「あぁ…ごめん、マリ。沙織ちゃんとリエがちょっと…な」

大きな目を更に大きく見開いたマリに晴人が苦笑いで軽く謝ると、後ろで控えていたメーシーが「あははは」と盛大に笑い声を響かせた。
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