Secret Lover's Night 【連載版】
「認めて…もらえませんか?」

顔を上げると、吉村はまだグッと眉根を寄せていて。それに不安になりながらも、晴人は黙って言葉を待った。そして、少し間を置いてから、吉村はニカッと笑った。

「ほんなら、こいつにちゃんと礼儀作法仕込むように母親に頼んどきますわ。このままやったら恥ずかしいてしゃぁないですからね」
「吉村さん…」
「ハルさんには、なんぼ感謝しても足りません。ホンマに…ありがとうございます。大事にしたってください」

ギュッと手を握られ、それに応えるようにそれを握り返す。男同士の堅い約束が、晴人の揺らぐ想いをピタリと止めた。

「ねー、まだー?」

黙って手を握る二人の手をツンツンと突きながら、千彩が唇を尖らせる。退屈だ!と、表情が十二分に訴えていた。

「ごめん、ごめん。もうええよ」
「ねー、なんの話やったん?」
「ん?俺とお前がこれからずっと一緒に居れるように、お兄様と約束したんや」
「お兄様と?じゃあちさも!」

ギュッと吉村の手を取り、千彩は満面の笑みでブンブンと上下にそれを振った。


「おにーさま、約束ね?ちさずっとはると一緒におるから!」


それにコクコクと頷く吉村の目には、涙が浮かんでいる。娘を持つとこんな思いをしなければならないのか…と、晴人は遠い未来を思い描いた。



こうして二人の生活は、一度穏やかに幕を閉じることとなった。
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