Secret Lover's Night 【連載版】
もうグラスを傾けられないほどに酔った吉村は、ベタリと机に頬を押し付けていて。そろそろ閉めますよ。と言う店主に飲み代を支払い、フラついた足取りで店を出た。

自分は十分なことをしてやれなかった。だからせめて18になるまでは。そう思い、思い合う晴人と千彩を引き離してまで自分の手元に引き取った。


「ハルさん…すんません…」


今頃不安と心配で胸が一杯だろう晴人を思い、申し訳なさで涙が出る。


「美奈…俺ではちー坊を守れんかった。ごめんな…ごめんな、美奈」


フラつく足取りで夜の街を歩きながら、吉村はブツブツと呟き続ける。


「俺があの時仕事に行かんかったら、美奈は生きてたかもしれん。ちー坊を置いて出んかったら、あんな辛い思いはさせんで済んだ。おとんとおかんに預けてたら、ちー坊が売られることなんかなかった…」


悲痛な父親の思いは、静かに南の地に呑み込まれた。
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