Secret Lover's Night 【連載版】
『はる、お仕事忙しいん?』
「せやなぁ」
『ともとがね、冬になるまでにははる帰って来るって言ってたけど…ほんと?』
「おぉ。それまで待っててくれるか?」
『うん!ちさ、いい子にしてるよ。お手伝いもしてる。今日は、ともととゆーまと一緒にハンバーグ作ったよ』
「おぉ。凄いやん。手伝えることはいっぱい手伝ったってな」
『うん!おんぎ、やからね』
「恩義?」

これはまた難しい言葉を引っ張り出してきたな。と、おそらくそれを教えただろう人物の顔を思い浮かべながら、晴人はクスッと笑い声を洩らした。

『ぎりとにんじょーとおんぎ、この三つは忘れたらダメってボスが言ってた』
「あぁ、ボスか」

予想した人物とは違った、顔も知らぬ千彩の友達。もう亡くなってしまっているらしいから会うことは叶わないけれど、千彩が自分からそんな話をしてくれたことが、晴人には堪らなく嬉しかった。

「今度そっち帰った時、もっとボスの話聞かせてくれるか?」
『うん、いいよ。今日はともとといっぱいお話する約束したから、今度はるにもしたげるね!』
「おぉ。楽しみにしてるわ」

漸く表情を緩ませた晴人の肩を、遠慮気味に恵介が突いた。それに苦笑いを零し、晴人は恵介へ携帯を手渡す。

「ちーちゃん」
『けーちゃん?けーちゃん!』
「ちーちゃん!」

今の今まで不安げに自分を見つめていたというのに、千彩の声を聞いた途端恵介の表情はパァっと晴れやかになって。メーシーと二人で肩を竦め、晴人は「ははっ」と短く笑って見せた。

「やれやれ、やな」
「だね」
「何でアイツはああもわかり易いんやか」
「それだけ姫と精神年齢が近いってことじゃねーの?」
「勘弁やわ。子守りは一人で十分や」

そうは言うものの、晴人の表情はとても柔らかくて。それだけでメーシーには、晴人がどれだけ千彩を想っているか、どれだけ恵介を大切に思っているかがわかった。
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