Secret Lover's Night 【連載版】
「何か羨ましいなー、そうゆうの」
「は?」
「俺も仲間に入れてよ」
「仲間やん。今更言うことちゃうやろ」
「そうゆうんじゃなくて、メンタル的に。俺にも相談してよ?麻理子よりは力になれると思うから」

そこでマリの名が出るのが怪しい。とツッコミたいのはやまやまなのだけれど、その手の話はのらりくらりとかわされるということを晴人は知っている。有難くその言葉を頂戴し、お礼にニヤリと笑って見せた。

「MEIJIさんも相談してくださいよ?何でも」
「うわー。ヤな感じ」
「隠し事しとる方が悪いと思いますけどー?」
「してないよ、隠し事なんて。俺はいつだってオープンだから」
「よぉ言うわ」

知り合ったばかりで「読めない」と思う人物は何人かいたけれど、何年付き合いを続けてもそう思い続けるのはメーシーだけで。それがまた魅力なのだとは思うけれど、男同士としては少し寂しくもある。

「メーシーって、ホンマ謎よな」
「そう?俺自身、至ってシンプルなつもりなんだけどね」
「それ、自己分析間違うとるで」
「あちゃー。そこまで言われちゃうか」
「どっちが素なん?まずそれ聞かせてや」

極上のフェミニスト。それが、普段のメーシーを表現する言葉。

けれど、ふとした時の男っぽさや稀に聞く乱暴な言葉遣いなども、昨日今日で作られたものではない気がする。マリとのことはさておき、せめてそれくらいは教えてもらっても良いのではないか。仲間なのだから。と、晴人は相変わらず柔らかく笑うメーシーに問い掛けた。

「どっちだと思う?」
「たまには感情的になってみるんもええかと」
「見事、脱・鬼畜を果たした誰かさんみたいに?」
「一言余計やぞ」
「あははっ。まぁ、そんな頃もあったかもね。忘れちゃったや、そうゆうの」
「誰かさんのせいで?」
「そうなんだよ。誰かさんがああなもんだから、学生時代の佐野君はかなり苦労してたよ。おかげで友達減った」
「ありゃ生まれつきの女王様やろうからなぁ」
「そうだよ。気をつけないと王子も従者にされちゃうよ」

そりゃ勘弁や。と笑いながら、晴人は思う。そんなことを言いながらも、いつだってマリを気にかけているのは自分じゃないか、と。

「まぁ、上手い具合にやってくださいよ。MEIJIさん」
「暖かいお言葉、痛み入ります」

そんな二人の和やかなムードも、携帯を片手ににこにことしながら向かってくる恵介が加われば、更に和やかなものとなる。なかなか良い仲間じゃないか。と、携帯を受け取りながら、晴人はここに来て漸く穏やかさを取り戻した。
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