Secret Lover's Night 【連載版】
数十分タクシーに揺られ、吉村は三木家に辿り着く。出迎えてくれたのは、優しく微笑む晴人の母だった。
「おかえりなさい、お兄さん」
「ママさん、えらいご迷惑かけてしもて…ホンマすんませんでした」
「そんなん気にせんでええんよ。お父さんももうすぐ戻りはると思うから、ちょっと待っててくれはる?時間大丈夫やろか」
「あぁ、はい。時間は大丈夫です。あの…ちー坊は…?」
深々と下げた頭を上げ遠慮気味に視線を戻す吉村に、母はにっこり笑って家の奥を指した。
「今ね、ちょっと疲れて寝てしもてるんよ」
「こんな時間に寝とるんですか?」
時刻は、日の暮れた17時。もう夕飯時だというのに…と、吉村はゆっくりと腕時計に視線を向けた。
「和室で寝てるから、中にどうぞ」
「すんません。お邪魔します」
促されて中に入ると、普段はきっちりと閉まっている和室の障子が完全に取り外されていて。これはいったい…と首を傾げる吉村に、キッチンに立った母が声を掛けた。
「お昼間に出かけたりするとね、疲れてこの時間に眠ってしまうんよ。夜中やなかったら誰かここにおるし、いつでも気付くようにそこの障子外したんよ」
「そう…でっか。すんません。ご迷惑ばっかりおかけして」
「私らが好きでやってることやから気にせんといてね。今日はね、お姉ちゃんと智人のライブに行ってて、それで疲れてしもたみたいやわ」
そう言えば…と、真っ先に頭を下げなければならないはずの相手がいないことに気付き、和室で眠る千彩を覗き込んでいた吉村は慌ててリビングへと戻った。
「弟さんは戻ってはらへんのですかね?」
「ううん、戻ってるよ。今部屋で曲作ってるみたいやから、呼んでくるわね」
「いや、お仕事中やったらかまへんのです。ちゃんとお礼言わなあかん思うてるだけで」
「ちーちゃんのことは智人から話させるから、まぁこれでも飲んでゆっくりしててください」
そう言って母がテーブルに並べたのは、父の愛飲している瓶ビールだった。
「いやっ、面倒かけてる身やのにそんなあつかましいこと出来ませんわ」
「そんな水臭いこと言わんと。私ら家族やないの」
そう言って差し出されて断れるはずもなく、一口だけ口をつけた吉村は、再び立ち上がり深々と頭を下げた。
「おかえりなさい、お兄さん」
「ママさん、えらいご迷惑かけてしもて…ホンマすんませんでした」
「そんなん気にせんでええんよ。お父さんももうすぐ戻りはると思うから、ちょっと待っててくれはる?時間大丈夫やろか」
「あぁ、はい。時間は大丈夫です。あの…ちー坊は…?」
深々と下げた頭を上げ遠慮気味に視線を戻す吉村に、母はにっこり笑って家の奥を指した。
「今ね、ちょっと疲れて寝てしもてるんよ」
「こんな時間に寝とるんですか?」
時刻は、日の暮れた17時。もう夕飯時だというのに…と、吉村はゆっくりと腕時計に視線を向けた。
「和室で寝てるから、中にどうぞ」
「すんません。お邪魔します」
促されて中に入ると、普段はきっちりと閉まっている和室の障子が完全に取り外されていて。これはいったい…と首を傾げる吉村に、キッチンに立った母が声を掛けた。
「お昼間に出かけたりするとね、疲れてこの時間に眠ってしまうんよ。夜中やなかったら誰かここにおるし、いつでも気付くようにそこの障子外したんよ」
「そう…でっか。すんません。ご迷惑ばっかりおかけして」
「私らが好きでやってることやから気にせんといてね。今日はね、お姉ちゃんと智人のライブに行ってて、それで疲れてしもたみたいやわ」
そう言えば…と、真っ先に頭を下げなければならないはずの相手がいないことに気付き、和室で眠る千彩を覗き込んでいた吉村は慌ててリビングへと戻った。
「弟さんは戻ってはらへんのですかね?」
「ううん、戻ってるよ。今部屋で曲作ってるみたいやから、呼んでくるわね」
「いや、お仕事中やったらかまへんのです。ちゃんとお礼言わなあかん思うてるだけで」
「ちーちゃんのことは智人から話させるから、まぁこれでも飲んでゆっくりしててください」
そう言って母がテーブルに並べたのは、父の愛飲している瓶ビールだった。
「いやっ、面倒かけてる身やのにそんなあつかましいこと出来ませんわ」
「そんな水臭いこと言わんと。私ら家族やないの」
そう言って差し出されて断れるはずもなく、一口だけ口をつけた吉村は、再び立ち上がり深々と頭を下げた。