Secret Lover's Night 【連載版】
「ボスがちー坊庇うたて…詳しく教えてもろてもええですか?」
「誰が来たかまではわかってませんでした。「怖い人」がいっぱい来て、ボスは千彩を守ってくれた言うてました。でも、その人らの方が強くて、ボスは負けてしもて千彩は連れて行かれたんや、って」
「おやっさん…」
「夜中やったみたいですよ。布団の中に入れられて庇われてたみたいで、あんまり深く布団掛けたらすぐに魘されて起きます。怖い人が連れに来る!言うて」

だからあんなにも布団を被るのを嫌がったのか…と、吉村は理由も訊ねずに叱り付けた自分を恥じた。そして、千彩に対して申し訳なさでいっぱいになる。


「俺は…ちー坊のこと何もわかってやれてなかったんですね」


呻くように小さく押し出した言葉に、智人はコクリと頷いて「でも、」と続けた。

「お兄も…晴人もわかってませんでした。俺からしてみたら、結婚する言うて連れて来たんやったら、ちゃんとわかっとけって話ですけど」
「そりゃ…俺かて父親のくせして何もわかってやれてなかったんですから…」
「まぁ、無理もないですけどね。アイツ、俺にしか話しませんし」

呆れたように肩を竦める智人に、隣に座って黙って話を聞いていた母が大きく頷いた。

「私もお姉ちゃんもね、智人から聞いて女同士やから何か話してくれるかな…と思うたんやけど、どうもあかんみたい」
「ママさんにもでっか?」

それは吉村にも意外で。智人よりも、いつでも優しく接してくれる母の方が話し易いのではないか。智人を「冷たそうだ」と思っている吉村は、どうしてもそう思ってしまう。

「あいつは俺のこと「暇人」やと思っとるからな。あぁ…あと、俺のバンドのメンバーに悠真って奴がおるんですけど、そいつと親父にはちょこちょこ話しよるみたいです」
「親父さんにも…」

それでか…と、電話口で「大丈夫や。何とかしたる」と言っていた父の言葉の意味が漸く吉村にも伝わった。

「それで…」

話を続けようとした智人が、急に言葉を切り口元で人差し指を立てた。それに首を傾げた吉村と、「あらあら」と席を立った母。不思議に思った吉村がどうしたのか尋ねようとした時、和室で眠っていた千彩がむくっと起き上がり、よろよろと左右に揺れながらぬいぐるみを引きずってリビングへと出てきた。
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