Secret Lover's Night 【連載版】

 智人の恋心

食事も済み、大好きなプリンも平らげた千彩は、一時間もしないうちに眠いと訴え始めた。そして、グズグズと子供のようにグズり始める。

「ともとー」
「眠いんやったら部屋行かんか」
「イヤ。みんなと一緒にいる」
「ほなそっちで寝ぇや」
「ここがいいー」

ソファに座る智人に擦り寄り、千彩は太ももにグリグリと額を擦り付ける。そんな千彩の背中をポンポンと叩きながらあやす智人も手慣れたもので。

自分と居た頃はこんな風にはならなかった。随分と無理をさせていたのか…と、二人のそんな様子を見ながら晴人は思う。

「ちぃ、二階行くか?」
「イヤー。ここにいる」
「おってもええけどグリグリすんな。痛いやろ」
「だっこー」
「せんわ」
「おいで?俺がしたろ」
「ともとー、だっこー」
「もー。晴人んとこ行けや」

両手を広げて強請る千彩の額を押して返す智人は、さすがに晴人の様子を気にかけていて。チラチラと視線を寄越すものだから、晴人もそれに気付いて仕方なく首を縦に振った。

「あー!もうっ!来い。寝るぞ」
「んー」

ゴシゴシと袖口で瞼を擦る千彩の手を取り、智人は和室へと引っ張り込んだ。そして布団に千彩を放り投げ、キョロキョロと辺りを見回す。

「おい、千彩。プリンは」
「プリンさっき食べた」
「ちゃうがな。くまのプリンや」
「プリン君…あー!プリン君がいない!」
「いない!ちゃうわ。どっか持って行ったんやろが」
「ちさどっこも持って行ってないもん。プリン君がいなくなった!」

お気に入りのぬいぐるみの姿が見当たらず、千彩のグズグズは更に拍車をかける。頭を撫でてみても大きなうさぎを押しつけてみても収まらないそれに智人が頭を抱えたくなった時、ひょっこりとクリーム色のくまが姿を現した。

「ちぃ、これか?」
「プリンくーん!どこ行ってたん?勝手にどっか行ったらダメでしょ!」
「行くか。さっさと寝ろ」

晴人から受け取ったそれをムギュッと千彩の顔に押し付け、智人はチラリと後ろを振り返った。
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