Secret Lover's Night 【連載版】
「持ち主!ちーちゃんは!?」
縋るような目で見上げる恵介に、女性は恐る恐る口を開く。
「今日は…見てません」
「今日…は?」
「いつも子供達と一緒に遊んでくれてて。来た時にこれがベンチの所に落ちてたんで、おかしいなと思ってメールしてみたんですけど…」
受け取ると、意外と重量のあったそれ。カパッと顔を開くと、いつも千彩が握るサイズのおにぎりが三つ、ラップに包まれ砂に塗れた状態で並んでいた。けれど、まさか…まさか…と、否定してほしい一心で恵介は千彩の特徴を並べた。
「これの持ち主、背がこんくらいで、髪がこんくらいで、高校生くらいの女の子ですか?」
「うーん…千彩ちゃんってお姉さんです。アドレスはこれ」
画面に表示されているアドレスは、間違い無く千彩のアドレス。お弁当箱を片手に恵介は悩む。行き先はわからない。けれど、ここに千彩が居たことは確実で。それを晴人に伝えるべきか否か。いや、まず警察?いや、晴人?悩む恵介に、女性は困ったように声を掛ける。
「あの…」
「え?」
「ハルさんですか?カメラマンの」
「え?いや、俺は違いますけどハルがどないしたんですか?」
もしかしたら何か手掛かりが掴めるかもしれない!と勢い良く顔を上げた恵介に、その女性は申し訳なさそうな表情をしてふるふると首を横に振った。
「千彩ちゃんが…ハルさんはお仕事でいつも家に居ないから、だから秘密でここに来てるって言ってました。寂しいみたいで…」
「あぁ…」
「家に居ないんですか?」
「ちょっと…姿が見えんから心配で」
「いつもは、15時くらいには帰っちゃうんですけど。ハルさんが帰ってくるからって」
「せやったら…もう帰ってくると思います。俺らが、今日はちょっとはよ帰って来てしもて。ありがとうございました」
丁寧にお辞儀をし、恵介は公園を後にした。
千彩が戻って来て、晴人は随分と仕事をセーブした。それはもう、指名の叶わなかったモデル達からクレームが来るくらい。それは、同じスケジュールで仕事をしている恵介も十分わかっている。
けれど、それでも千彩が寂しい思いをしているのもわかっていたつもりでいる。
「ちーちゃん…せーとおかしなってまうで」
千彩がいなければ、晴人の精神状態は極端に不安定になる。離れていた7ヶ月の間、どれだけ晴人の精神面を支えてきたことか。
その苦労を思い出し、ずんと重くなった気分を引き摺って恵介は夕日の沈みかけた空を無理やりに見上げた。
縋るような目で見上げる恵介に、女性は恐る恐る口を開く。
「今日は…見てません」
「今日…は?」
「いつも子供達と一緒に遊んでくれてて。来た時にこれがベンチの所に落ちてたんで、おかしいなと思ってメールしてみたんですけど…」
受け取ると、意外と重量のあったそれ。カパッと顔を開くと、いつも千彩が握るサイズのおにぎりが三つ、ラップに包まれ砂に塗れた状態で並んでいた。けれど、まさか…まさか…と、否定してほしい一心で恵介は千彩の特徴を並べた。
「これの持ち主、背がこんくらいで、髪がこんくらいで、高校生くらいの女の子ですか?」
「うーん…千彩ちゃんってお姉さんです。アドレスはこれ」
画面に表示されているアドレスは、間違い無く千彩のアドレス。お弁当箱を片手に恵介は悩む。行き先はわからない。けれど、ここに千彩が居たことは確実で。それを晴人に伝えるべきか否か。いや、まず警察?いや、晴人?悩む恵介に、女性は困ったように声を掛ける。
「あの…」
「え?」
「ハルさんですか?カメラマンの」
「え?いや、俺は違いますけどハルがどないしたんですか?」
もしかしたら何か手掛かりが掴めるかもしれない!と勢い良く顔を上げた恵介に、その女性は申し訳なさそうな表情をしてふるふると首を横に振った。
「千彩ちゃんが…ハルさんはお仕事でいつも家に居ないから、だから秘密でここに来てるって言ってました。寂しいみたいで…」
「あぁ…」
「家に居ないんですか?」
「ちょっと…姿が見えんから心配で」
「いつもは、15時くらいには帰っちゃうんですけど。ハルさんが帰ってくるからって」
「せやったら…もう帰ってくると思います。俺らが、今日はちょっとはよ帰って来てしもて。ありがとうございました」
丁寧にお辞儀をし、恵介は公園を後にした。
千彩が戻って来て、晴人は随分と仕事をセーブした。それはもう、指名の叶わなかったモデル達からクレームが来るくらい。それは、同じスケジュールで仕事をしている恵介も十分わかっている。
けれど、それでも千彩が寂しい思いをしているのもわかっていたつもりでいる。
「ちーちゃん…せーとおかしなってまうで」
千彩がいなければ、晴人の精神状態は極端に不安定になる。離れていた7ヶ月の間、どれだけ晴人の精神面を支えてきたことか。
その苦労を思い出し、ずんと重くなった気分を引き摺って恵介は夕日の沈みかけた空を無理やりに見上げた。