Secret Lover's Night 【連載版】
そんな二人だけの暮らしに、ある日突然加わった人がいる。

その人は、あたしを「カワイソウ」だと言った。
でも、ママのこともあたしのことも大好きだと言った。
おにーさまがお前らを守ったるからな、と言った。

だから、あたしはその人が大好きだった。


でもあたしは、今独りぼっち。
誰も大好きだと言ってくれないし、誰も守ってくれない。


ママは、あたしを置いてどこか遠くの世界へ行ってしまった。

その世界がどこにあるか、どれくらい遠いのかは知らないけれど、あたしは一緒に行けないのだとママは言った。でも、「そこに行けばママはもう悲しくない」とも。

だからあたしは、ママをそこへ行かせてあげることにした。

大好きなママが居なくなるのは寂しいし悲しいけれど、毎日悲しくて泣いていたママが泣かなくてもよくなるなら、あたしは嬉しいと思った。


ママが遠い世界に行ってしまって、おにーさまは悲しいと泣いていた。
だからあたしは言った。


「ママはもう泣かないよ。ちさは嬉しいよ」


そしたら、おにーさまはあたしを抱いてわんわん泣いた。
何が悲しいのかわからないけれど、おにーさまはいっぱい泣いていた。


おにーさまに連れられて東京って街に来て、また新しい人と出会った。
ボスはとっても優しくて、いっぱい色んなことを教えてくれる人だった。

「ちー坊は大介の宝物だからな」

って、いっつも頭をわしゃわしゃしてくれた。


でも、ボスももう居ない。
お仕事に行ったおにーさまも、帰って来ない。
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