Secret Lover's Night 【連載版】
あたしは、知らない街で独りぼっちになった。
だけど、ここに居ればおにーさまは迎えに来てくれるらしい。

もう独りぼっちは嫌だった。
早く迎えに来てほしかった。

だから、黙って店長さんの言うことを聞いていた。

でも、ここでもあたしは独りぼっちだった。


誰もあたしの名前を呼んでくれない。
誰もあたしの頭をわしゃわしゃしてくれない。
誰もあたしに笑ってくれない。


それが悲しくて、寂しくて、いっぱい涙が出た。



窓から外を眺めると、雨が降っていた。
雨は空が泣いてるんだって、ママが教えてくれた。


いつもにこにこと笑っていた空は、最近泣いてばかりだ。
きっと心が欠けてしまったんだ。

あたしみたいに欠けて、それが悲しくて泣いているんだ。

そう思ったら、ママが迎えに来てくれたような気がして。
出てはいけないって言われていたお店の外に慌てて飛び出した。

どうしてもママに会いたかった。
だから、冷たい階段を駆け下りた。


「サナちゃん!」


誰かが呼んだ。
見つかったらママには会えない。

だから、あたしは隠れた。
その声と足音が聞こえなくなるまで、じっとしていた。


もう独りぼっちは嫌だ。
もう疲れた。


そんな風に思いながら、じっと隠れて泣いた。



「サナちゃん。探されてるんちゃうん?」



ママやおにーさまと同じ喋り方をする人が、あたしの名前じゃない名前を呼ぶ。
驚いたけれど、慌てて振り返ると、その人は笑ってくれた。


あんなに寂しかったのに。
あんなに悲しかったのに。


あたしの涙はそれでピタリと止まってしまった。






あたしはもう独りぼっちじゃない。
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