Secret Lover's Night 【連載版】
Chapter 1 コイイロ

 ひとめぼれは雨の中

一つ、また一つ
曇天の空が涙を零し始めた。


嫌だ、嫌だ
もう疲れた


そう言って泣いている。俯く彼女と同じ、大粒の涙。


「サナちゃん!サナちゃん!!」


彼女の肩がビクリ、と揺れる。慌てて壁際に寄り、声が遠ざかるのをじっと息を殺して待つこと数十秒。響くヒールの音が消えた代わりに、再び名を呼ばれた。


「サナちゃん。探されてるんちゃうん?」


心地好い訛りに、跳ねるように振り返ったびしょ濡れの彼女。それを見て、傘を差し出しながら微笑んだ彼。

差し伸べられた、細く、長い指を持つ大きな手と、震える小さな手。



きっとこれが、二人が恋に落ちた瞬間。
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