Secret Lover's Night 【連載版】
そんな晴人に、身を屈めた恵介がコソコソと擦り寄って来た。


「昨日ちーちゃんに聞いたんやけどさ…」


思わず身を引いたものの、千彩に聞こえないように配慮しているだろうことがわかり、晴人もカップを置いて同じように身を寄せた。

「ちーちゃん、どうもお母さんがアル中なったみたいやわ」
「はぃ?…アル中?」
「で、多分借金か何かあったんや思うんやけど、その筋の…お兄様って人がちーちゃんをこっちへ連れて来たらしいんやわ」
「お兄…様」

聞き覚えのある単語に、晴人の眉根が寄る。チラリと振り返ると、千彩はまだご機嫌に朝食を頬張っているようだった。

「…で?」
「そのお兄様も行方知れずで、住まわせてくれてたボス…多分組長か何かなんやけど、ボスも亡くなったらしくてな」
「ボス…ねぇ」
「で、風俗店っぽいとこに売られた…って身の上」
「なるほど…な」

一度深く頷き、晴人は再び新聞とカップを手にする。けれど、いつもならすんなりと頭に入るはずの英文が、何だか幾何学文字のように見えて。

諦めてそれを置き、背もたれを乗り越えて千彩の隣へと腰掛けた。

「あっ、はるもプリン食べる?昨日けーちゃんとめーしーが買って来てくれたやつ、一個残ってた」
「ん?俺はええよ」
「そーやった。はるは甘いの嫌い」
「んー。そうやな」

にっこりと微笑むと、それに釣られて千彩も微笑む。話しをしたのは良いのだけれど、泣きはしなかっただろうか…と、そっと頭を撫でた。

「はる?」
「ここにおってええからな?」
「ん?うん」
「ずっと俺の傍におったらええから」
「うん!」
「俺も千彩が大好きやから…な」

その言葉に、千彩の笑顔が輝く。

やっと言葉に出来た想いに、晴人の胸のつかえは完全に取れた。
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