Secret Lover's Night 【連載版】
自分に対してもこんな風だっただろうか…と、思い出そうとしても、どこにもそんな姿は無くて。目の前に居る人物は本当にあの…自分の恋人だった男だろうか…と、目を疑いたくなった。

「そんな優しい顔…するんだね」
「ん?そうか?」
「私には…してくれなかった」
「そんなことないと思うけどなー」
「ううん。晴はいっつもどこか違うところ見てるみたいな目…してて…私…いっつも不安だった。誰かに…盗られちゃうんじゃないか…って」

俯いたリエが、ポツリ、ポツリ、と漏らすように言葉を押し出す。

落ち着いた千彩をカウンターチェアに座らせて、その言葉を聞きながら晴人はカチリとタバコに火を点ける。その音に顔を上げたリエが、とうとう涙を零し始めた。

「タバコ…吸うんだ」
「知らんかった?匂いで気付いてたと思ってたわ」
「私…晴のこと何も知らなかった…」
「知ってるやん。キスで始めて腕枕で終わるとこまで、全部」
「そうゆうのじゃ…なくて…」
「じゃあ、何?この子は知らんよ?そうゆうとこ」

意地悪く笑いながら、晴人はふぅっと白い煙を吐き出す。その姿を見つめていた千彩が、突然ぷっと噴き出した。

「こらこらー。笑うとこちゃうやろ?」
「だって、はるおかしいもん」
「おかしいことあらへんわ」
「ちさにはそんな意地悪なこと言わへんもん」

嬉しそうに笑う千彩に、晴人は「あぁ…こいつも女やな」と痛感する。これが女の戦いというやつだろうか。

こんなにも年齢差のある戦いは、今まで目の当たりにしたことは無いけれど。


「おねーさん、はるのこと好き?」


不意に問われ、リエは口ごもる。

肯定したいけれど、真っ直ぐに自分を見つめる千彩の瞳がそれを許してはくれなさそうで。スッと視線を逸らし、小さくコクリと頷いた。


「好き?でも、ちさははるのこと大好き」


ぴょんと飛び降りた千彩が、リエの前へと駆け寄る。そして、大きく息を吸って声を張り上げた。


「ちさのはるとはおねーさんにはあげへん!」


両手をギュッと下で握り締め、千彩はふるふると震えている。それが精一杯の抵抗なのだと理解した晴人は、背中からそっと抱きしめて耳元で囁いた。


「そうや。千彩の晴人やで」


頬を寄せ、スリスリと擦り寄る。千彩の小さなヤキモチが、素直に嬉しくて。それに安心したのか、千彩はふぅっと息を吐いて硬くしていた体を晴人の胸に預けた。
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