Secret Lover's Night 【連載版】
「お邪魔…します」
「どーぞ」
振り返ると、屈んでサンダルを揃えている姿が見えて。ついでとばかりに散らばったままの千彩のサンダルに伸ばそうとした手を、「ええから」と言葉だけで制した。
やはり、外面だけは立派な大人の女だ。
「そこ座ってて。コーヒー淹れる」
「あっ、私コーヒー飲めない…」
「え?あぁ…そうやったな」
「別れた途端、そんなことも忘れちゃうんだね」
悲しそうに笑うその人物は、確かに自分の恋人だった人物で。グラスに千彩用に買ったオレンジジュースを注ぎながら、晴人は苦笑いを零す。
「はるっ、ちさはコーヒー!」
「えー?お前には苦いからあかんって」
「ちさは飲めるっ!」
「こっちにしとき。な?」
「飲める!」
そう言って駄々をこねる千彩は、ソファに座る人物をあからさまに敵視していて。膨れた頬をそっと撫ぜてやると、ペタリと胸に擦り寄った。
「晴…やっぱり私…」
「帰るんか?わざわざ乗り込んで来たのに?」
「そんなつもりじゃ…」
「とか言うて、こいつ見に来たんやろ?ほら、この通りや。沙織ちゃんの言うてた通りのガキやで」
被ったままだった千彩のキャップを奪い取り、晴人は顔を見せてやろうとするのだけれど、当然ながら千彩はそれを嫌がって。ふいっと顔を背けると、その場にしゃがみ込んだ。
「あーあ。拗ねてもて…もー。ちょっと跨ぐで?」
ひょいと千彩を跨ぎ、コーヒーカップとグラスをそれぞれの手に持ってソファへと歩み寄る。グラスを手渡し、カップはカウンターへ。
そして、キッチンの入り口にペたりと座り込んだままの千彩に晴人は両手を伸ばした。
「ちぃ、おいで?」
優しくそう声をかけると、窺い見るようにチラリと視線を寄越した千彩が、不安げに眉尻を下げていて。更に優しく「千彩?」と呼ぶと、うんと腕を伸ばして無言の瞳が訴えかけた。
「おいで、千彩」
「はるぅ」
「はいはい。いーこいーこ」
抱き寄せ、長い髪を梳いてやる。すると、気持ち良さそうに目を細めた千彩が首元に擦り寄って来る。
それが好きだった。
「さぁ。落ち着いたことやし話聞きましょか、リエさん」
「あの…私…」
千彩を腕に抱いたままの晴人を見遣り、リエは言葉を失った。
「どーぞ」
振り返ると、屈んでサンダルを揃えている姿が見えて。ついでとばかりに散らばったままの千彩のサンダルに伸ばそうとした手を、「ええから」と言葉だけで制した。
やはり、外面だけは立派な大人の女だ。
「そこ座ってて。コーヒー淹れる」
「あっ、私コーヒー飲めない…」
「え?あぁ…そうやったな」
「別れた途端、そんなことも忘れちゃうんだね」
悲しそうに笑うその人物は、確かに自分の恋人だった人物で。グラスに千彩用に買ったオレンジジュースを注ぎながら、晴人は苦笑いを零す。
「はるっ、ちさはコーヒー!」
「えー?お前には苦いからあかんって」
「ちさは飲めるっ!」
「こっちにしとき。な?」
「飲める!」
そう言って駄々をこねる千彩は、ソファに座る人物をあからさまに敵視していて。膨れた頬をそっと撫ぜてやると、ペタリと胸に擦り寄った。
「晴…やっぱり私…」
「帰るんか?わざわざ乗り込んで来たのに?」
「そんなつもりじゃ…」
「とか言うて、こいつ見に来たんやろ?ほら、この通りや。沙織ちゃんの言うてた通りのガキやで」
被ったままだった千彩のキャップを奪い取り、晴人は顔を見せてやろうとするのだけれど、当然ながら千彩はそれを嫌がって。ふいっと顔を背けると、その場にしゃがみ込んだ。
「あーあ。拗ねてもて…もー。ちょっと跨ぐで?」
ひょいと千彩を跨ぎ、コーヒーカップとグラスをそれぞれの手に持ってソファへと歩み寄る。グラスを手渡し、カップはカウンターへ。
そして、キッチンの入り口にペたりと座り込んだままの千彩に晴人は両手を伸ばした。
「ちぃ、おいで?」
優しくそう声をかけると、窺い見るようにチラリと視線を寄越した千彩が、不安げに眉尻を下げていて。更に優しく「千彩?」と呼ぶと、うんと腕を伸ばして無言の瞳が訴えかけた。
「おいで、千彩」
「はるぅ」
「はいはい。いーこいーこ」
抱き寄せ、長い髪を梳いてやる。すると、気持ち良さそうに目を細めた千彩が首元に擦り寄って来る。
それが好きだった。
「さぁ。落ち着いたことやし話聞きましょか、リエさん」
「あの…私…」
千彩を腕に抱いたままの晴人を見遣り、リエは言葉を失った。