Secret Lover's Night 【連載版】
「そんな顔せんといてー」
「どんな顔?」
「オンナの顔」
「女?ちさは女だよ?」
「そうやなくてー」

これは困った…と、晴人は苦笑いをするしかない。微妙なニュアンスは、千彩には伝わらないのだ。

それどころか、今こうして男を組み敷いていることがどういう意味を持つのか、千彩には全く理解が出来ていない。

「あー。どうしよかなぁ…」
「なにー?」
「ちぃちゃん、俺は男やで?」
「知ってるよ?変なはるー」

笑い出した千彩の太股の外側をふわりと撫でると、ビクリと体が跳ねた。面倒くさがって結局履き替えなかったショートパンツからは、白い足が惜し気もなく晒されている。

「どした?ちぃも今朝俺の体触ってたやん」
「ちさはいいの!」
「そんなんズルいやろ?」

もう一度同じように撫でると、途端に頬を赤らめて千彩はイヤイヤと首を振る。

「嫌なん?」
「…くすぐったい」
「でも、知りたいんやろ?」

形勢逆転とばかりにクルリと体を反転させ、今度は晴人が千彩を組み敷いた。


よく晴れた夏の日の昼間、ここには二人きり。


見下ろした千彩は、顔を赤らめてギュッと胸の上で手を握っていて。それに煽られてしまうあたり、やはり男という生き物は単純だと言わざるを得ない。

「嫌なん?」
「くすぐったいー」
「こうしたらわからへん」

深く口付けながら、同じ感覚を与え続ける。すると、苦しげにしていた千彩の吐息が、徐々に甘く変化した。

「はぁ…」
「んー?」
「はるぅ」
「なぁに?」
「んー」

瞳を潤ませ、千彩は無言で訴える。けれど、自他共に認めるほどのSっ気を持ち合わせている晴人が、その訴えを素直に聞き入れるはずがない。

逆にそれが晴人の加虐心を煽ることにしかならないことを、組み敷かれた千彩はまだ知らない。

ストイックな人間ほど、一度ストッパーが外れると歯止めが利かなくなるのだ。

「何や?朝は服も着んとうろちょろしてたくせに」
「イヤー」
「嫌なん?」
「イヤじゃ…ない」
「どっちやねんなー」

はははっと笑いながら千彩の真っ赤な頬を撫ぜ、思う。そういえば、こんな風に自分から求めるのは、学生時代以来かもしれない…と。
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