Secret Lover's Night 【連載版】
「けーちゃん?代わってー?」
「ん?はい、どーぞ」
「もしもし、けーちゃん!」

『おー、マイエンジェル!いい子にしてるかー?』

「してるー!けーちゃん今日は何時に帰って来る?」
「え?けーちゃん今日も帰って来んの?」

千彩の言葉に驚いたのは、電話口の恵介よりもそれを傍で聞いていた晴人で。目を瞠る晴人に、当の千彩は不思議そうに首を傾げていた。

「けーちゃん帰って来ないん?」
「けーちゃんにはけーちゃんの家があるからなぁ」
「えー!」

『ちーちゃん、今日は8時には帰るよーって晴人に言うててくれる?』

「うん!はるっ、けーちゃん8時に帰って来るってー」
「あー…そう。そうですか。今日も来られるんですね」
「ちさ今からはるとプリン作るから、帰ってきたら一緒に食べようね?」
『おー。楽しみにしてるわな』
「ばいばーい」

ご機嫌に通話を終えると、千彩はまるでスキップでもしそうなくらいに浮かれていて。そんなに恵介が帰って来るのが嬉しいのだろうか…と、今朝の小さな嫉妬を胸に蘇らせた。


「千彩」


そっと名を呼ぶと、長い髪がふわりと揺れる。手を伸ばしそれを一掬いすると、晴人はじっと千彩を見つめた。

「なぁ、ちぃ?」
「んー?」
「俺と恵介、どっちが好き?」

自分でも、くだらない嫉妬だと思う。高校生じゃあるまいし、アラサーが何を言うか…と。

けれど、どうにもそれを止める術が見当たらなくて。

「どっち?」

問い詰めるように一歩踏み出すと、千彩はにっこりと笑って両手を伸ばした。


「ちさははるが好き。大好き!」


そう言った千彩が、あまりに綺麗に笑うものだから。腕の中に閉じ込めておきたい…と、色々と厄介な想いを抱く大人は、歪んだ愛情を注いでしまいたくなる。

「そっ…か。うん、せやな」
「うん!」
「よし、プリン作るか!」
「うん!」

一度強くギュッと抱き締め、二人並んでキッチンに立つ。


腕の中に残る愛しさに、晴人はほんのりと胸の中を温かくした。
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