灯火-ともしび-
「…コンニチハ。」

「あれ、目の下、クマできてますよ?寝不足ですか?」


…バレた。
本当にこいつは…。


「…ホント、あんたって人のことよく見てるのね。」

「まぁー人間観察結構好きなんで!」


本当に人懐っこい笑顔の持ち主である彼は私のカバンが置いてある席の隣に自分の荷物を置いた。


「寝不足なのは夏海さんが発表だからですか?」

「そうね。」

「夏海さんの卒論構想、楽しみにしてます!」


それだけ言い残すと、部屋から出ていく。


「ホントに夏海さん、安達くんに好かれてますよね。」

「あいつはきっと根本から人懐っこいのよ。」

「それも言えてますけどー!」


後輩のレジュメに目を通しながら、私はカバンを置いておいた席に座る。
確か二人の発表は来週…だったような。


「これ、発表は来週だよね?」

「はい!」

「じゃあこれ預かっておくね。今週中に気になったとこ言うから。」

「「ありがとうございます!」」


私よりも高い二人の声が見事に重なった。

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