灯火-ともしび-
うちのゼミは前期、3年生と4年生が混じった形で行われる。
後期は3年は3年、4年は卒論一本と分かれてしまうため、先輩後輩が議論を交わすことができるのはこの場がとりあえずはメインとなる。


基本的に今の時期、4年生の卒論構想を各回1人、全員共通で読み進めている文献考察、3年生が興味関心のあることをレジュメ1枚程度で述べる…などなど色々と手広く議論している。
一応研究室名もあるものの、内容としては本当に手広い。社会学なんてそんなものだ。


「それじゃ、今日は夏海の卒論と…。」


本日の視界は友葉(ユウハ)。4年生でゼミ長だ。


「じゃ、いつも通り3年生の発表からやってもらおうかな。
…小田桐さんから。」

「はいっ!
えっと、今日の発表担当の小田桐です。よろしくお願いします。
まず私の興味関心のテーマは…。」


私はざっとレジュメに目を通す。
…ふぅん。運動部のマネージャーの感情に注目…ねぇ…。


レジュメ内で気になったところにフリーハンドで線を引く。
加えてどのような点が気になったのかをメモする。これは後で質問するためだ。


たとえば私が気になったのはここだ。
彼女と友人の会話の部分の一つ。


『辛くて泣いちゃったときとかあって、そういう時謝られたりすると罪悪感感じちゃってさ…。』


…全然理解出来ない。
泣くほど辛いことならば向こうが謝って当然くらいの気持ちになるものじゃない…のか…?


〝泣くほど辛いなら辞めればいい〟


私は小さくメモをした。

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